非正規社員と正規社員との格差是正訴訟

非正規雇用社員と正規社員との格差是正訴訟

「同一労働同一賃金」。最近ニュースを賑わせているこのワード、皆さんの会社で対応の準備は進んでいますか。
ほとんどの会社で対応ができていないのではないでしょうか。厚労省のガイドライン等はあるものの、判例が少ないので動きようがないというのが実情だと考えます。

そんな中、非正規雇用社員と正規社員との是正を焦点にした、今回の訴訟は、「正社員と同じ業務なのに、手当が支払われず賞与に格差があるのは労働契約法に違反するとして、農業機械の大手企業(松山市)のグループ会社2社に、元契約社員(現在は正社員)が約1,750万円の支払いを求めた」ものです。

この訴訟の控訴審判決が、令和元年(2019年)7月8日、高松高等裁判所であり、裁判長は、2社に計約232万円の手当の支払いを命じた一審の松山地方裁判所の判決を支持し、原告と被告の双方の控訴を棄却した。」といった報道がありました。

2018年4月24日の一審判決では、
契約社員と正社員の間で「業務の内容に大きな相違があるとはいえない」と認定。
住宅手当や家族手当のほか、年齢に応じて生活費を補助する物価手当、欠勤がない場合に支払われる精勤手当の不支給は、労働契約法20条で禁じられている「不合理な待遇差」に当たるとしました。

その一方で、賞与の格差については、契約社員にも、年2回、「寸志」として10万円程度が支払われており、一定の合理性が認められるなどとして、違法性を否定しました。
今回の控訴審では、この一審判決が支持されました。
本判決の特徴は、非正規の社員への住宅手当と家族手当の不支給が不合理とされた点です。
2018年6月の最高裁の判決では、これらの不支給は、不合理とはされていません。

手当については、各企業において独自に設定しているため共通項目が少なく、統一的に不支給の合理性の判断をすることは難しいでしょう。各企業において、手当の性質を理解した上で、慎重に非正規社員への支給・不支給を決める必要がありそうです。

なお、正社員と非正規社員の待遇差をめぐる訴訟で、最近、待遇差が不合理とされる範囲が広がっていますね。
これは同一労働同一賃金の実現に向けた法改正が決まっていることが影響している理由としてありそうです。
同改正の施行(2020年4月〔中小企業は1年遅れ〕)に向けて、各企業では素早い情報収集が求められます。

同一労働同一賃金の実現に向けた法改正について、厚生労働省が特集ページを設けています。
準備に役立つ各資料が用意されていますのでどうぞご一読下さい。

【参考】厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

労務・年金相談安達事務所